おことわり

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2013年2月4日月曜日

勝手にしやがれ(プレス)

封切は1960.3.26ニュー東宝。
センチメンタル・アドベンチャー」のように公開規模の理由でチラシが作られなかった作品もあるけれど、これが60年代以前となると、都内の封切館で公開された有名作品でもチラシがあるのか分らないことが結構あります。単に自分が不勉強なだけかもしれませんが…

ヌーヴェルヴァーグの代表作といわれるゴダールの「勝手にしやがれ」もそのひとつで、このプレスが本命ではないかという話を聞いたことがありますが、どうなのでしょうか(つい先日も大阪の館名印のみが押されたものがヤフオクで出品されていました)。

配給したのは新外映配給という会社で、ここは「太陽がいっぱい」「抵抗」「ぼくの伯父さん」「危険な関係」といった、その後何度もリバイバルされる名作を配給しているのですが、会社の規模が小さかったからなのかチラシが見当たらない、あるいは現存数が極端に少ない作品が結構あるように感じています。「太陽がいっぱい」の日比谷スカラ座版は存在するらしいのですが、ネットや書籍を含めて見かけたことがありませんし、「抵抗」や「ぼくの伯父さん」もチラシはあるのでしょうか。「危険な関係」も本でしか見たことがないし。

青春群像
B5よりやや小さめの三つ折。
悩ましいのがフェリーニの「青春群像」のように、プレスに劇場印を押されているものが流通されていることで、前述の「勝手にしやがれ」もそうですが、この辺がチラシ扱いにしていいか判断に迷うところです。「青春群像」もオークションでは館名印が入っていれば、立ちどころに競合になりますが、印鑑なしでプレスとして出品されていると、乾いた回転寿司のごとくスルーされ続けます。印鑑だけ、というのはどうしても「後世の偽作」の懸念が出てしまいますし、プレスに印鑑があるから「映画館で配られた」とも言い切れないわけで、時代をさかのぼって集めるときは、この辺の疑心暗鬼、葛藤がつきまといますね。

B5二つ折りの見開き部分。
この時点では「ヌヴエル・ヴァーグ」と紹介されています。
余談になりますが、「勝手にしやがれ」という邦題が生まれた経緯ですが、自分は小林信彦が70年代のキネ旬のコラムで紹介した、

●無名の監督ゴダールの処女作「息ぎれ」を買いつけたのは、青山にあった新外映である。「息ぎれ」では仕方がないので、あれこれ、邦題を考えたが、これというのが出ない。宣伝部一同、バテてきて、一人が、
「ええ、勝手にしやがれ!」
「あっ、それでいこう」
(集英社刊「地獄の観光船」より引用。文中の映画の題名部分に傍点。)

だと思っていたのですが、世間ではこの作品を買い付けた、後に映画評論家として活躍する秦早穂子が名付け親になっているそうで、かと思えば、「月光仮面」や「おふくろさん」で有名な川内康範作であるという検証・反論をされている方もおられて、これも説得力があります(この方のブログは他の記事もよく調べられていてとても面白く、おすすめです)。

自分はその昔、スバル座へこの作品と「気狂いピエロ」の二本立てを勇んで観に行ったものの、途中でうとうとしてしまったという、仏語教師の方のハスミンにライフルで躊躇なく撃ち殺されそうな人間なので、作品をあれこれいう資格はありませんが、真相はどうなのでしょうかね。

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